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地域活性化への挑戦と学び

― ごえん隊のビジネスコンペティション参加録―

(永田隼大・手塚碧衣・矢作菜々美・青野樹人)

 

 私たち「ごえん隊」は、地方の人口流出や少子高齢化といった社会課題に向き合い、その解決に少しでも貢献したいという思いから結成された4人の学生チームです。2025年6月から12月にかけて、AKKODiSコンサルティング株式会社と株式会社志結舎が主催する「SDGs産学連携プロジェクト~いま、私たちがすべきこと~産学連携ビジネスコンペティション2025」に参加し、約半年間にわたりビジネスモデルの構築と実証実験に取り組みました。

 この半年間は、私たちにとって挑戦の連続でした。社会課題に向き合う難しさ、現場のリアルを知る大切さ、そして仲間と共に試行錯誤しながら前に進む楽しさを実感した期間でもあります。本記事では、私たちがどのように課題と向き合い、どんな壁にぶつかり、どのように乗り越えていったのか。そのプロセスと学びを振り返ります。

■ 主催企業・協力企業の紹介

今回のビジネスコンペティションは、AKKODiSコンサルティング株式会社と株式会社志結舎が主催となり、学生と社会人が協働しながら社会課題の解決に挑む実践型プログラムとして実施されました。

● AKKODiSコンサルティング株式会社

 AKKODiS コンサルティング株式会社は、テクノロジーを駆使してプロセスや製品の開発、運用、最適化のあり方を再定義し、企業のイノベーションと成長を加速させるグローバルなデジタルエンジニアリングコンサルティング企業です。母体である Adecco Group の強固な基盤を背景に、コンサルティングから開発、教育、人材ソリューションまで多岐にわたる事業を展開しています。AI・データサイエンス・メカトロニクスなど多様な技術領域をカバーし、6,000名を超える現場に精通したテックコンサルタントのチームが、顧客組織の現場と融合<フュージョン>する独自のアプローチにより、AIトランスフォーメーションを通じた飛躍的な生産性向上を支援しているのが大きな特徴です。さらに、グローバルネットワークを活かした豊富な人材・技術力により、企業の成長と変革を総合的に支えることを可能にしています。今回のプロジェクトでは、AKKODiSコンサルティング株式会社の社員である吉澤さんが社会人メンターとして伴走してくださり、毎週のミーティングを通して客観的な視点から多くのアドバイスをいただきました。

● 株式会社志結舎

 株式会社志結舎は、企業の経営支援・業務支援・起業支援、人材育成などを幅広く手がけるコンサルティング会社です。「志を結び、未来につなぐ」という理念を掲げ、大企業をはじめ企業が抱える課題に寄り添いながら、伴走するスタイルを特徴としています。経営戦略の立案、業務プロセスの改善、新規事業の立ち上げ支援に加え、N-SHIPコミュニティーでの多様な人の交流を通じた、次世代を担う人材育成にも力を入れており、組織の持続的な成長を支える多面的なサポートを提供しています。単なるコンサルティングにとどまらず、クライアントの“志”を育み、それを未来へつなげるための実践的な支援を行う点が大きな強みです。

■ チーム発足と最初の壁

 「地域活性化に貢献したい」という共通の思いを持つ4人が集まり、ごえん隊はスタートしました。しかし、最初から順調だったわけではありません。地方の人口流出や少子高齢化といった大きな社会課題を前に、どこから着手すべきか、どのようにビジネスとして成立させるか、ゼロから構想することに大きな難しさを感じていました。

特に、都市部で生活してきた私たちにとって、地方のリアルな課題を肌で感じることが難しく、机上の空論になってしまうのではないかという不安もありました。そこでまず、地域外からの流入を増やすための「農泊事業」を構想し、地域の魅力を体験してもらう仕組みづくりに挑戦しました。

 

■ 最初の挑戦:農泊事業の構想

 農業体験や文化体験を組み合わせた宿泊型のプロジェクトを考え、千葉県いすみ市で地域活性化に取り組む「ツーリズムいすみ」さんにインタビューを実施しました。

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現場のリアルな声を伺うことで、農泊事業の実現には多くの課題があることがわかりました。

  • 農家の家に宿泊するのは現実的に難しい

  • 協力者を継続的に確保するのが難しい

  • 宿泊施設との連携が必要

  • 収益性の確保が難しい

これらの課題を踏まえ、農泊事業の実現可能性は低いと判断し、計画を断念することになりました。大きな方向転換でしたが、この経験が次の発想につながる重要なステップとなりました。

 

■ 新たな着眼点:地域おこし協力隊

 農泊事業を断念した私たちは、改めて地域活性化の担い手について考え直しました。その中で出会ったのが「地域おこし協力隊」という存在です。

地域おこし協力隊は、都市部から過疎地域へ移住し、3年間の任期で地域協力活動を行う制度です。移住・定住支援、地域活性化、農林水産業支援、第三次産業の創出など、地域の課題解決に直接関わる重要な役割を担っています。

 しかし、一般社団法人移住・交流推進機構(2025)によると今後の活動の課題として「相談窓口の充実」、「情報発信の充実」、「活動の目的の具体化、明確化」が挙げられていました。これらの文献から、地域おこし協力隊員自身も多くの悩みや課題を抱えていることがわかりました。

 

■ インタビュー調査で見えた「隊員のリアル」

 千葉・埼玉・群馬・茨城・栃木など、関東圏で活動する地域おこし協力隊の方々[CT1] (17名)にインタビューを実施しました。そこで挙がった主な悩みは次の通りです。

  • 行政との連携が難しい、認識のズレがある

  • 入隊前に得られる情報が少なく、ギャップが生まれやすい

  • 活動期間が3年間と短く、成果を出す前に任期が終わってしまう

  • 退任後のキャリアに不安がある

 文献調査だけでは分からなかった悩みも浮かび上がり、よりリアルな課題が見えてきました。これらの声を聞き、私たちは「地域おこし協力隊を支える仕組みが必要だ」と強く感じました。

 

■ 実証実験:コミュニティプラットフォームの試行

 インタビュー結果を踏まえ、地域おこし協力隊同士がつながり、悩みを共有し、情報交換できるコミュニティプラットフォームを試験的に運用することにしました。Slackを用い、11日間の実証実験を行いました。

 最初は、ごえん隊が毎日コンテンツを投稿し、隊員同士の意見交換を促す形式で進めました。しかし、思うように発言が増えず、ごえん隊が一方的に発信する状態が続いてしまいました。

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 そこで、Slackのリアクション機能に注目し、以下の改善を行いました。

  • 投稿頻度を1日1回から2日に1回へ変更

  • コメントではなくリアクションで回答できる投票形式を導入

  • メンション機能を活用し、参加を促す

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 この工夫により、隊員の方々からの反応が増え、会話が生まれるようになりました。
事後アンケートでは、

  • 投げかけは週1回程度がちょうど良い

  • 自由記述よりリアクション形式の方が参加しやすい

  • 企業とのマッチング機能があると良い

といった貴重な意見をいただきました。

 

■ 最終的に構築したビジネスモデル

 インタビュー・実証実験・アンケートを経て、私たちは次のビジネスモデルを提案しました。

● 地域おこし協力隊 × 潜在協力隊 × OB・OG

 三者をつなぐコミュニティプラットフォームを構築し、

  • 入隊前の情報不足

  • 入隊後のギャップ

  • 退任後のキャリア不安

といった課題を解消する仕組みです。

 さらに、地域おこし協力隊と協働したい企業・行政・個人を「コラボユーザー」として有料で参加してもらうことで、収益性を確保しつつ、隊員の活動を加速させることを目指しました。

 

■ ビジネスコンテスト大学別審査会、全体審査会で得られた学び

 本ビジネスコンテストでは、中間報告会と大学別審査会、および、AWARDの3回、プレゼンテーションの機会があります。中間報告会は9月下旬に行われ、キックオフから約3か月間での成果を発表する場となりました。ビジネスモデルの大枠、また実証実験の実施計画という段階で、他大学の参加者からアドバイスをいただき、ビジネスモデルのブラッシュアップを行うことが、趣旨になっています。一方、審査会とAWARDは成果評価であり、審査会は大学の先生方がビジネスモデルの優位性、実現可能性等を評価しコンテストの順位に反映されます。AWARDでは順位発表だけでなく、プレゼンを視聴した学生が投票してオーディエンス賞が決定されます。[CT1] これら3つのプレゼンに際しては、本番当日まで、何度も資料を修正し、発表練習を重ねて臨みました。

特に大変勉強になったのは、大学別審査会で審査を担当してくださった教授からいただいたフィードバックでした。

  • 「地域活性化をサポートする地域おこし協力隊を支援する」という着眼点が興味深い

  • 実証実験では思うように進まない場面もあったが、原因を探り続け、最後まで粘り強く改善策を模索し続けた点が評価できる

  • コラボユーザー(企業、行政、個人)がお金を払ってまでプラットフォームに入るメリットが弱いため、改善が必要である

 目からうろこのご指摘や評価は、私たちの励みと自信につながりました。

 また、AWARDでは他チームの発表をリアルタイムで聞くことができ、多様な視点から社会課題に挑む姿勢に大きな刺激を受けました。加えて、各チームともオーディエンス賞獲得を目指してプレゼンテーションの伝え方や資料に工夫を凝らしていましたので、そこからの学びも多かったです。

 私たちごえん隊は、残念ながら入賞することは叶いませんでしたが、ビジコンに参加することで得られた次のような経験

  • 実際に地域の方々にインタビューしたこと

  • 実証実験を行い、改善を重ねたこと

  • 社会人の方と協働してビジネスモデルを構築したこと

これらすべてが1人1人の財産となり、チームとしての絆も深まりました。

 

■ おわりに

 地域活性化という大きなテーマに向き合い、試行錯誤を重ねながら最終的に「地域おこし協力隊コミュニティプラットフォーム」というビジネスモデルにたどり着いた半年間は、私たちにとって大きな成長の機会となりました。

 この挑戦を支えてくださったメンターの吉澤さん、 AKKODiS コンサルティング株式会社の皆様、株式会社志結舎の皆様、ツーリズムいすみの皆様、そしてインタビューや実証実験に協力してくださった地域おこし協力隊の皆様に、心より感謝申し上げます。

 今回、ビジネスモデルとして構築したコミュニティプラットフォームの実現、運用には、依然として多くの課題が残りますが、この経験を糧に、これからも社会課題に向き合い、行動し続けていきたいと思います。

 

 参考文献

一般社団法人 移住・交流推進機構(2025)「地域おこし協力隊の現状と課題~令和6年度地域おこし協力隊アンケート集計結果の概要~」 https://www.iju-join.jp/f-join/R6kyouryokutai_gaiyo.pdf (2026年1月13日参照)

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