AIカメラ「AlterMo」でより良い未来を創造する
〜株式会社Cosmowayの取り組み〜
[執筆者:豊川歩果、石坂友暉、河内舞雪、藤原綺音、嘉納雄一郎]
目次
1.はじめに
2.Cosmoway社と藏重氏、新谷氏の紹介
3.AlterMoの開発経緯と苦労や課題
4.AlterMoの現状と今後の展望
5.我々のプロジェクトに関して
6.さいごに
7.参考文献
1.はじめに
私たち「快適ランチタイム班」は、東洋大学白山キャンパス6号館地下一階の学食の混雑緩和を行い、より快適なランチタイムを作ることを目標にこれまで活動を行ってきた。今回は、「カメラを用いた学食の混雑緩和対策」の検討をするため、株式会社Cosmowayの藏重龍樹氏と新谷友樹氏にインタビューを行った。スマートフォンのカメラを使い画像検知ができるアプリ「AlterMo(オルタモ)」についてのお話を軸に実証実験への具体的なアドバイス、今後の展望などをお聞きした。
2.Cosmoway社と藏重氏、新谷氏の紹介
株式会社Cosmoway(以下「同社」)は、2005年9月に設立されたモバイル機器向けにAIや画像解析等の最新テクノロジーを軸にシステム開発を行っている。同社は、今回インタビューに応じて頂いた藏重龍樹氏(COO/最高執行責任者)と新谷友樹氏(UIUXデザイナー)をはじめ26名で活動しており、テクノロジー技術力の高さだけでなく、デザインの良さ・視認性の高さを売りにしている。
これまでの事業として、特定の端末を使用することで解錠することが可能なスマートロック「SMALO」の開発等を行い、現在は後述するモバイルIoTアプリ「AlterMo」を用いたトマト農家のIoT導入サポートを「factory4」というチームで開発を進めている。
3.AlterMoの開発経緯と苦労や課題
「AlterMo(オルタモ)」はAndroidスマートフォンのカメラを使用し、自身で線の仕掛けを描くことで、線に触れる対象をリアルタイムで監視し、異変検知を行うアプリケーションである。
AlterMoプロジェクトは、山梨県にあるトマトの選果場からの依頼をきっかけにスタートした。選果場の方から、これまで行ってきたアナログな選果の仕方を効率化したいという話が来たのである。もちろん今はもっとデジタルで便利な機械はあるが費用が掛かるという問題があり、もっと安価に効率よくできないかと言われたことが開発のきっかけだそうだ。
この選果場からの要望と他のお客様のニーズを統合して、簡単に監視や管理をしながら作業の効率を上げるアイデアを考え出した。開発中には、映像を正確に分析する技術をスマートフォンアプリに組み込むことが⼤きな課題だったと言う。これは技術的な難しさに加え、ユーザーが簡単に使⽤できるようにするための⼯夫が求められる課題であった。
また、開発にはいつも「Lean Startup」の考え⽅を取りいれている。このプロジェクトの基本的な構想を「Lean Canvas」というツールで整理し、これにより製品の主要な要素を「プロダクトの⾻太の⽅針」で明確にし、設計、開発、 検証、改修を短いサイクルで⾏い、⾼品質なアプリを制作することを⽬指した。しかし、この過程でチーム内での意⾒の調整や⼼理的な安全を保ちながら進めることが難しいという課題もあったと言う。
さらに、開発にあたり必ず必要となるのが実証実験である。実証実験では、現行のバージョンで使用している動体検知技術や、色相、彩度、明度の設定を基にした判定機能を、様々な環境で繰り返しテストした。例として、選果場での実験やYouTube等にある映像をモニターに表示し、動体検知と色による物体検知を行った。これは、AlterMoが実際に目的とする領域を正確に識別できるか、ユーザーが意図した箇所を正しく選択できるかどうかを確認するために行った。また、ユーザーインターフェース(UI)の観点からも同様のテストを行った。さらに、バッテリーの持続時間や充電中の発熱に関する情報を数値化し、データを収集している。AlterMoは設置型のツールであり、バッテリーの消耗や発熱による問題も考慮し、これらの要素を改善するためのデータを取り、今後のアップデートへと活用していきたいと述べていた。
引用:Cosmoway HP「AlterMo 線を引くだけで簡単に監視できる新感覚の検知アプリ」https://f4.cosmoway.net/altermo/
4.AlterMoの現状と今後の展望
現在、AlterMoと他のモジュールを接続するためには、USBケーブルや無線接続によるインターネットを通じた方法が用いられている。例えば、ifLink(注1)対応のモジュールと接続する際には、Web APIを利用するためのJavaやJava ScriptなどのWebプログラミング言語が必要になる。また、IoT機器と接続する場合は、AndroidアプリにはKotlinやJavaを、IoT機器にはPythonやC/C++、Arduinoなどの言語が使われている。
解析可能な範囲としては、スマートフォンのカメラが映した画面領域全体とされる。ユーザーが画面上に線を引くことで、その線が検知する範囲を指定する仕組みとなっている。ただし、遠方の小さな領域は正確に検知することが難しい場合があるという。学食などの広い範囲を画面に収めるには、複数台のスマートフォンによるAlterMoアプリを連携させることで検知は可能となる。また、現在は人数などのカウント機能は提供していないという。
さらに、現在AlterMoはAndroidユーザー向けに開発されており、無料提供されている。このアプローチは、市場のニーズを把握し、ユーザーからのフィードバックを集めるために重要とされる。無料提供する期間を通じて、ユーザーの行動パターンや好み、さらには改善点を詳細に分析することができ、将来の製品開発において非常に貴重な情報源として活用していく。
今後の展開として、一部の高度な機能、例えばAIによる画像解析や他のアプリとの連携機能などを有料アプリとして提供する計画がなされている。この戦略の背景には、これらの高度な機能が開発においてより多くのリソースを必要とし、また特別な価値をユーザーに提供するという考えがあるという。そのため、これらの機能は有料化して、さらなる技術的な改善とサポートを継続的に提供するための収益を確保することが目的とされている。
さらに、iPhoneやiPad向けにも同様のアプリを展開する予定だという。この際には、Android とiOSの両プラットフォームで提供する機能において一貫性を保ち、ユーザー体験を最大限に整合させることを目指している。これにより、どのデバイスを使用していても同じ品質と体験をユーザーに提供することができるようになる。プラットフォーム間での機能の差異を最小限に抑えることで、ユーザーはアプリの利用において混乱することなく、スムーズな体験を享受できるようになるのである。
このように、彼らが開発するアプリは、ユーザーのニーズを理解し、それに応じて最適な機能とサービスを提供することに重点を置いていることがわかる。これには、技術的な革新とユーザーの利便性の向上の両方が含まれていると言う。
(注1)「ifLinkプラットフォーム」のことであり、様々なIoT機器やWebサービスをモジュール化して、その組み合わせで便利な仕組みをつくれる、オープンなIoTプラットフォームのこと。
5.我々のプロジェクトに関して
我々のプロジェクトにおいては混雑緩和のために、カメラの映像からデータの集計・可視化、待ち⾏列検知、混雑予測などの機能を使えるのではないかと意見をいただいた。
AlterMoを学食で使う場合には、2つある階段の上に設置し、人の流れを可視化したり、それぞれの店舗にAlterMoを設置し、ラインを列が超えるとその店舗は混雑していると判定される、というのも良いのではないかといった案も出た。
その場合、学生に活用してもらうための手順を確認したところ、一つの案として、AlterMoから得られた映像をAPIを通じて大学のサーバーに送信し、アプリ側で画像を分析して、⼤学のwebサイトや大学アプリで利用することが可能とのことである。これにより、学⽣や教職員がリアルタイムの混雑情報やキャンパス内の動向を確認することが出来るようになる。カスタマイズ可能なダッシュボードを通じて、ユーザーは⾃分に関連する情報に簡単にアクセスし、視覚的に魅⼒的な形で⾒ることができるのだ。
プライバシーに関してはデータのセキュリティとプライバシーの保護が最優先され、送信されるデータは厳重に暗号化される。また、個⼈を特定できる情報は⼀切収集せず、また公開されないとのことだった。
6.さいごに
インタビューを終えて、AlterMoは私たちに身近なスマートフォンのカメラを用いて画像検知を可能にする魅力的なアプリであることがわかった。AlterMoは専門的な知識がなくても、簡単にアプリを用いて画像検知ができるため、様々な問題の解決に貢献できるのではないかと考えられる。今後、様々なフィードバックを経て、さらに進化し新たな機能が追加されていくことによって、私たちにとって身近なアプリになることを期待したい。
また、私たちのプロジェクトに関して、インタビューでお話いただいた使用方法をもとにAlterMoを用いた実証実験を実施し、混雑緩和の実現に近づけていきたい。
7.参考文献
・株式会社Cosmoway公式ホームページ:https://cosmoway.net/(参照日:2024年1月12日)
・東芝デジタルソリューションズ「自分で作れるIoT ifLink」:https://www.global.toshiba/jp/products-solutions/ai-iot/iflink.html(参照日:2024年1月12日)