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「本のガチャ 活動記録」

 

( 執筆者:太田涼介 後藤陽太 中森暁緋 千葉奏 山口航平 )

 

1.はじめに

 私たちは、「本のガチャ」をテーマに、本の廃棄量を減らしSDGsに貢献しながら、読書を通じて大学生の新しい取り組みを応援することを目標に活動しました。「自宅に読まなくなった本がたまっていく一方で、何とか有効活用できないか」という悩みをきっかけに、使わなくなった本とまだ読んだことのない本をランダムに少額で交換できるサービスを構想し、大学内で試験的なサービスの提供を行いました。

 

2.ビジネスコンテストの概要

 私たちは「産学連携ビジネスコンペティション」(以降、ビジコン)に参加しました。これは、学生と社会人コーディネーターで構成された混成チームで活動するものです。1チーム4名前後の学生に社会人のメンターの方がつき、テーマやフィールドの設定・アイデア抽出から提案まで共同で動き、外部の協力企業・組織と共創しながら、課題を解決するソリューション及びビジネスモデルを設計します。このビジコンは、教育目的に行われるもので、SDGsに関連させたビジネスモデルの設計という縛りがありますが、その他に関しては学生の自由に研究を進めることができます。また、アイデアの独創性や社会的意義、実現可能性などが評価され、他大学にチームと競い合います。東洋大学からは2つのゼミが参加し、ほかにも一橋大学、芝浦工業大学、法政大学、武蔵野大学、京都産業大学など、9つの大学が参加しました。

 

3.協力いただいた方の紹介

【AKKODiSコンサルティング株式会社について】

 AKKODiSコンサルティング株式会社は、自動車・輸送、防衛・航空宇宙、通信、クリーンテック、ヘルスケアの分野においてデジタルエンジニアコンサルティングを提供する企業です。特に先端技術を活用した課題解決に強みを持ち、クライアントのイノベーションや持続可能な成長をサポートしています。

 私たちのチームでは、AKKODiSコンサルティング株式会社様から大学専任コーディネーとして小松さんにサポートいただき、社会人メンバーの千葉さんがメンターとしてご支援くださいました。メンターの千葉さんには、週1回のオンラインミーティングを通して、社会人の視点から、私たちのビジネス構想から、実現可能性など、私たち学生にない視点での的確なアドバイスをいただき、最後まで私たちの挑戦に伴走していただきました。小松さん、千葉さん、本当にありがとうございました。

 

4.チーム発足

 メンバーが考えた初期案に賛同し結成されたチームで、チーム発足時から取り組みの内容は大きく変わっていません。家に使い終わっている本を放置したままで、何とか有効活用できないか、というメンバーの悩みを発端に、それを解消しながらリユースに取り組みたいと考えました。初期案では大学の授業で使う教材が高いという悩みから、大学生をターゲットに大学の教科書リユースを行おうと考えました。

 

5.アンケート調査

 私たちチームメンバー5人が共通して持っていた課題として「自宅に読み終わっていて売るつもりもない、ただ保管してある本がたくさんあること」というものがありました。東洋大学生が本当にそう思っているのか確かめるべく東洋大学在学の学生約100人に対して実態調査のアンケートを実施しました。結果としては、家に保管している本の冊数を聞いたところ、本を10冊以上保管している人の割合が全体の8割でした。また、学生が大学生活に活力をもって過ごせていないのではないかという疑問もぶつけてみました。大学を楽しくないと感じている学生がいることや、書籍を通じたイベントに参加したいと思う学生が7割もいることがわかり、このアンケートを踏まえて大学に来たくなるような取り組みにする必要性があると感じました。学生に大学に来たいと思ってもらえるような取り組みにすることで、新たな学びを促進するきっかけを作ることができると考えました。

 

6.オリジナリティを求めて壁にぶつかる

 なかなか順調には進まず、自分たちのチームのオリジナリティを出すことに苦戦しました。チーム発足時からある程度ビジネスモデルが設計されていたのは良いものの、視野を狭めすぎてしまい、ビジネスコンテストの評価要素である、「アイデアの独創性」を見出すことに苦戦しました。ターゲットを大学生に設定する理由、ビジネスモデルの社会への貢献、独自のどういったアプローチができるか、新しいものを生み出すことへの大きな壁にぶつかりました。もともとの教材のリユースは大学内で開催するには理解を得られないということで、そのほかの本を取り扱うことになり、自分たちの思い描くものと実現できるものには様々な障壁があることを認識しました。このようなことが重なり、モチベーションの管理もうまくいかず、活動が停滞した時期もありました。

 

7.本のリユース×ガチャガチャ

 オリジナリティ問題解決のカギはガチャガチャでした。先輩からアドバイスをいただき、本のリユースを行うだけでなく、それをガチャガチャと掛け合わせました。従来のガチャガチャは、子供が中心の娯楽アミューズメントでしたが、近年は、大人を含む幅広いターゲット層にアプローチしており、2024年のガチャガチャ市場規模は、過去最高の1400億円を記録し、急成長しています。このように、現在流行しているガチャガチャをビジネスモデルに加えることによって、今まで本にあまり触れてこなかった学生にもアプローチができると考えました。また、ガチャガチャの大きな特徴であるランダム性に着目し、普段手に取らないようなジャンルの本も当たる可能性があるため、学生が新たな気づきを得たり新しいことに挑戦したりするきっかけになると考えました。この本との偶然の出会いこそが今回の私たちの取り組みの狙いです。

 

8.大学内イベント開催

 ビジネスコンテストの評価項目である実現可能性(PoC実行度)のため実証実験を行いたいと考えました。東洋大学の教務課の方に協力いただき、大学サイトへの広告、大学内のポスター掲示、イベント場所の提供、一部備品の貸し出し等の援助をいただきました。実際にガチャガチャの機械をレンタルし、学校にガチャガチャがあるという珍しさや話題性で集客を図りました。

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 開催場所は、東洋大学白山キャンパス6号館1階(学生が多く集まる食堂の上)で、2025年10月27,28,30日の計3日間、ランチタイムに行いました。参加条件としては、自宅にある不要な本1冊+100円で行いました。また、今回の取り組みの目的は、本との偶然の出会いを通じて、新たな挑戦のきっかけづくりというコンセプトのため、漫画や雑誌などの書籍は、対象外としました。

 本来のガチャガチャの相場より低い価格設定に関しては、学生に本を自宅から持参していただくことを考慮するとともに、ワンコインで手軽に参加できることをこのイベントの強みとするために100円という価格設定をしました(今回は実証実験のため、ゼミ生の協力を得て本を事前に用意し、参加者に選んでいただいた本は持ち帰っていただきました。また、いただいた100円も返金いたしました)。

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 こちらは、実証実験当日の様子になります。利用者が持ってくる本のジャンルは小説や自己啓発本など様々で、運営側としてもよい循環ができたと実感することができました。約100冊の本の循環が行われ、リユースを通して本の廃棄量を減らしSDGsに貢献しながら、参加人数56人、総売り上げ10,300円、3日目にはどうにか黒字をマークするという成果が得られました。

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 イベントに合わせて回答していただいたアンケートでは、「本を読む良いきっかけになった」という声や、「価格が安すぎる」「新たな世界が広がる嬉しさを感じた」「また開催してほしい」といった、好評を多くいただきました。また、今回の実証実験ではターゲットにしていなかった教職員の方々にも参加していただき、様々な層で需要があるビジネスなのではないかと自信にもなりました。

 

9.審査会 発表当日

 いよいよ大学別審査会の発表当日となりました。自分たちの設計したビジネスモデルの評価が行われる審査会では、一橋大学の教授に審査していただきました。入賞を目指し、パワーポイントの修正や発表練習を本番直前まで行いました。本番でも練習通り発表が進みよいプレゼンであったと感じています。しかし、質疑応答の時間では、審査員からの予想を超える鋭い質問に困惑しました。私たちは白山キャンパスに通う2万人の学生をターゲットとして考えていましたが、審査会では「このビジネスでは、本を読むことを習慣にしている人が対象なのではないか」というご意見をいただき、自分たちの視野の狭さ、楽観的感覚を痛感しました。また、ガチャガチャという魅力を押し出すことで多くの人が興味を持って下さると考えていましたが、「ガチャガチャだけで本を読みたくなるとは思わない」というご意見をいただき、ビジネスの魅力は自分たちが思っていたよりも新規性に欠けていたことを感じました。少し苦い思い出にはなりましたが、審査が終わった時にはチーム全員が達成感を感じました。

 審査会と別日に、AWARDと呼ばれる各大学全チームの最終報告が行われました。中間発表で、いくつかのチームの発表を見ていたので、そこからどのように変わったのか楽しみながら、各大学の発表を聞きました。最後に審査員の評価による最優秀賞、優秀賞、プレゼン参加者の投票によるオーディエンス賞の発表があり、かすかな期待をしていましたが、残念ながら対象にはなりませんでした。受賞チームの発表を聞いてみると、最優秀賞のチームはアプリを開発していて、ほかの入賞チームも、長い時間と果てしない労力のかかるビジネスモデルとなっており、入賞も納得の発表でした。

 

10.さいごに

 今回私たちが挑戦したプロジェクトは身近な悩みから生まれたアイデアでしたが、ビジコンの参加は、アイデアを考えることとそれを社会に届けることとの間にある隔たりに身をもって体験できたものになりました。アンケート調査や企画、実証実験、そして審査会でのご指摘をいただく中で、ビジネスとして成立させることの難しさと向き合うことになりました。

 特に印象に残っているのは、実証実験と大学別審査会で得られた学びです。大学内で実際にイベントを開催し、想定通りにいかない場面や想定外の反応に直面したことで、「机上で考えるだけでは見えない課題」が数多くあることを実感しました。また、審査員から鋭い質問をいただいた際には、自分たちの視野の狭さや準備不足を痛感すると同時に、社会に通用するビジネスモデルを考えるための視点を学びました。

 一方で、「本のガチャ」をきっかけに本を手に取った学生や教職員の方々の反応から、自分たちの取り組みが誰かの行動を少しでも変えることができたという手応えも得ることができました。入賞という結果には至りませんでしたが、チームで試行錯誤を重ね、最後まで一つのビジネスモデルを形にできたことは、私たちにとって大きな経験となりました。

 約8ヵ月の長きにわたるチャレンジでしたが、単なるアイデア発表の場ではなく、社会人メンターや他大学の学生と関わりながら、自分たちの考えを磨き続ける学びの場でした。この経験を通して得た課題意識や挑戦する姿勢を、今後のゼミ活動やそれぞれの進路に生かしていきたいと考えています。最後になりますが、メンターの千葉さんをはじめとする我々の活動にお力添えいただいた皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。

 

 参考文献

 AKKODiSコンサルティング株式会社(2026) 「会社案内」
https://www.akkodis.com/ja/company/about(2026年1月13日参照)

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